フライトの数だけ、初心に帰る

操縦士操縦士 横手の物語

ヘリコプターのパイロットという仕事は、実に特殊だ。何よりもまず安全と安心を優先しなくてはならない。
顧客の要望が理解できないわけでは決してない。それどころかそうしたほうが良いと思うことさえある。だが、たくさんの人の命に関わる仕事をしている以上、安請け合いは不可能である。
たとえクライアントの要望が理に適っていても、フライトプランはパイロット自身が作る。安全で確実なフライトを提供するために。

顧客の要望、期待にこたえるために

空の仕事は天候に左右されやすい。それゆえ、すべてのフライトで要望に応えられるわけではない。事前調査で飛行可能と判断したものの、
予定よりも天候の悪化が早く、上空に待機したり、時にはフライトを中止しなくてはならない時もある。
意図的に遠回りすることもあれば、顧客の指示に対し、協議を行って優先順位をつけ、効率的なフライトを提案することもある。そういった中でお客様の要望に応えていく。

要望は時にあいまいなもの

東邦航空は報道の仕事も多い。
報道の仕事は1分1秒を争う。「とりあえず飛んでくれ、行き先は後で無線で指示する」という要望も多い。
なぜか?それは報道各社同士、より良い映像を求めて競争しているからだ。だが東京ヘリポートは一つ。
フライトの順番待ちは不可避となる。
そんな中でパイロットがすべきことは、自分の技術、経験で培った知識を総動員し、顧客の満足を引き出すことだ。

パイロットは他社のヘリコプター、天候、風向きなどを考えてベストな撮影アングルを確保する。
これは経験によって身につくテクニックの一つだ。
スカイツリ―の周りを1度に8機の機体が飛ぶことがあった。
このような場合、対象を中心に、右旋回※を行いながらベストのアングルを探っていく。
パイロット自身も被写体を「観る」センスが問われてくるのだ。
それに、空を飛ぶのは自分の機体だけではない。
自衛隊機など他の飛行機のために待機しなければならない場面もある。それは顧客が搭乗中でも変わらない。
最終的な責任はすべて、パイロットが握る。

※同一対象物を複数機で取材する場合、空中衝突の防止を目的とし
「回転翼機は右旋回とする」という原則があります。

ヘリコプターは公共性が高く、また求められる役割も、そうした場面が多い。
ドクターヘリや道なき場所に物資を運ぶこと。上空から落石や雪崩の危険性が無いか調査すること。
また船が就航しにくい離島間における島民の生活を支えるツールとして、目には見えにくいが、人々の生活を支える重要な役割を担っている。