初めての作業責任者として

整備士整備士 石飛の物語

ヘリコプターには機種にもよるが、だいたい12年に1度、オーバーホールと呼ばれる大規模な整備が行われる。
東邦航空の整備では責任者を1名任命し、数名単位のチームで工期までに完了させられるようスケジュールを組んでいく。
東邦航空の整備士である石飛は、2013年にこの作業の初めての責任者となった。入社してまだわずか数年である。しかも彼に
とってはその機体の整備資格を取得したばかりでの作業で、大きなプレッシャーがかかっていた。

オーバーホールは機体を部品単位に分解し、異常がないか検査する仕事になるため非常に時間がかかる。
しかも機体に使われている部品は海外製のものもあり、異常が見つかった場合、海外の部品メーカーとやり取りして、それを調達するか修理・
点検してもらわなくてはならない。実はこれが骨なのだ。というのも
日本の感覚が通用しない。
こと納期に関して言えば、納期スケジュール通りに合わせて納品してもらえることはまずない。必ず遅れるのだ。しかもこの遅れは全体の遅れへとつながる。
仮にヘリの点検後の稼働日が決まっていると、それに合わせて工期を設定するわけだが、部品が届かなければ作業は滞ってしまう。何もできず無駄に費やした時間が、次第にプレッシャーとなって作業責任者にのしかかっていく。

また機体のマニュアル自体は英文で書かれている。
専門用語ばかりのマニュアルは、たとえ英語がわかる人間にとっても難解だ。逆に専門用語はわかっても英語の文法や言い回しが
分からなければ、正しく理解できない。
石飛はここでも大きなストレスを抱えた。
だが彼は、業務終了後マニュアルを手に机に向かい、英文を丹念に読み解いていった。
マニュアルだけでなく、点検の予習と段取りのシミュレーションも仕事が終わった後の重要なタスクとなった。

作業は先輩に聞きながら進めていった。仲間たちも相談に乗ってくれてアドバイスをくれた。わかってはいたものの、外注した点検に遅れが
生じ、またパーツの納品も納期よりだいぶ遅れていた。それを踏まえつつも、しかし営業はAOG*(エアクラフトオンザグラウンド)は是が非でも避けたいと言う。ヘリコプターは飛ばしてこそ初めて価値をもつ。
納期が遅れるとスポンサーに迷惑がかかる。
石飛は時に徹夜をして、プレッシャーと戦いながら自分の仕事を着実に進めていった。

*休航中のことを指す。

先輩に怒られながらも、彼は初めての作業責任者としてオーバーホールを乗り切った。
工期にも間に合ったが、しかし反省すべきことも多かった。
それを改善し、次の仕事へ繋げられるのもこうした経験があるからこそ、である。
石飛はこの経験を活かし、たくさんの資格取得を目指している。
今よりも多くの仕事を任せてもらえるようになるために。